第四話 こはぜの話


甲馳、甲鉤、骨板、牙籤,何と読む字なのか解かりますか?
これは全て"こはぜ"と読みます。
では、"こはぜ"とはどう言う意味でしょうか?
本当の所は私にも解かりませんが、"こはぜ"は足袋だけに使用するものではなく、 手甲、きゃはんでも使用します。
又、本の帙(ちつ)を綴じる為の、象牙や動物の骨で作られた三角の爪も"こはぜ"と呼ばれています。
この様な事から、小さいと言う意味の"小(こ)"と、弾けると言う意味の"爆ぜ(はぜ)"から出た言葉。
甲に掛ける物という意味の"こうかけ"から出た言葉。等が考えられます。
言葉の意味は言語学者にお任せ致しますが、足袋に"こはぜ"が使われたのは実は明治時代になってからのことです。
それまでの足袋は,紐足袋が中心で、大金持ちの商人の中で、象牙で作られた"こはぜ"を使用した例はあった様ですが、今の様に、こはぜの足袋を大量に作られる様になったのは、現在の埼玉県行田市がルーツと言われています。
幕末の頃に、行田で作られた足袋は大量生産で江戸に販売されたそうです。
この時に、こはぜを取り入れ、明治時代に入りこはぜも大量生産で作られるようになり,現在のような形で、行田の足袋として全国に販売される様になってこはぜの足袋が中心に為った様です。
ついでながら、今は四枚こはぜや五枚こはぜが中心ですが、戦前は三枚こはぜや二枚こはぜが中心でした。
今のような色や形がずっと続いている訳ではないのです。
面白いですね。