第五話 足袋の色、柄の話


現在、婦人用、紳士用共正式の足袋の色は"白"とされています。
これは、江戸時代に大名が江戸城に参内する時に紋付、袴に白足袋の装束で在ったことに由来すると言われます。
ですから、現在、紳士用の"羽織、袴"の衣装や婦人用の"紋付"には白足袋を第一礼装としてお奨めしています。
では、色足袋はどうであったかと言うと、昔は職業により色が決められていました。
"青縞"の生地は藍の匂いを蛇が嫌うことから狩り装束に使い、転じて紺キャラコとして現在に残り、青縞足袋は職人の衣装が藍染めの為職人用足袋となりました。
江戸城内において、例えば奴さんは"紫色"、茶坊主衆は"ウコン(黄色)色"とされていました。
今度、歌舞伎や日本舞踊で『供奴』と言う踊りをご覧になると、奴さんですから紫の足袋を履いています。
又、『助六』と言う歌舞伎で主人公は紫の鉢巻に黄色の足袋を履いていますからご覧になってください。
この主人公は、茶坊主上がりの御家人ですので黄色の足袋を履く訳です。
ちなみに、紫の鉢巻の意味は主人公が頭痛持ちでそのおまじないと言う訳です。
今は、このような規制は無くなっていますので、紳士用"アンサンブル"、婦人用"付け下げ""小紋"等、遊び着どしてお使いの場合、自由な色使いでお楽しみ頂けます。
武士が戦で履く足袋は柄を染め上げた"革足袋"で、これが柄足袋の由来に為っています。
昔は、歌舞伎で若衆の武士は"小桜"や"松葉"の柄を使い、荒武者は"トンボ"や"巴"の柄を使ったものでした。
江戸時代も後半になると、一般庶民にも"ビロード"や"更紗"等の輸入生地で足袋を創って楽しむ人達も現れ、この名残が"別珍足袋"や"コールテン足袋"となります。
このように、正式のエチケットを守らねばならぬ一部を除き、足袋は本来自由に楽しむ事が出来るものなのです。
少なくとも、私達のご先祖様はかなり楽しんでいた様ですね 。